通夜、告別式という、慌ただしくも濃密な儀式が終わり、故人を見送った次の日。多くのご遺族が、昨日までの喧騒が嘘のような静寂の中で、深い喪失感や虚脱感に襲われます。社会的な務めとしての葬儀は終わりましたが、残された人々の、本当の意味での「弔い」の時間は、実はこの日から始まるのです。この、大切な人を失った悲しみから立ち直っていくプロセスを「グリーフワーク」と呼び、その悲嘆に寄り添い、支える活動を「グリーフケア」と言います。葬儀の次の日は、まさに、このグリーフケアの入り口に立つ、非常に重要な一日です。葬儀までの数日間は、ご遺族は悲しむ暇もないほど、多くの「やるべきこと」に追われています。しかし、その全てが終わった時、心は、守るべきものがなくなった無防備な状態で、故人を失ったという、剥き出しの現実と向き合わなければなりません。涙が止まらなくなったり、逆に全く涙が出なくなったり。食欲がなくなったり、眠れなくなったり。故人への後悔の念に苛まれたり、時には怒りの感情さえ湧き上がってきたり。これらの心身の反応は、大切な人を失った時に起こる、ごく自然で、正常なものです。決して、「自分が弱いからだ」「早く立ち直らなければ」と、自分を責める必要はありません。この時期に最も大切なのは、自分の感情に正直になることです。悲しい時は、我慢せずに思い切り泣く。誰かに話を聞いてほしければ、遠慮なく親しい友人に電話をする。何-もする気が起きなければ、無理に動かず、ただ故人の写真を眺めて過ごす。自分の心が求めるままに、悲しむ時間、故人を偲ぶ時間を、自分自身に許してあげることが、回復への第一歩となります。また、家族や親しい友人など、周りの人々の役割も非常に重要です。葬儀の次の日に、そっと電話を一本かけ、「大変だったね。無理しないでね」と声をかけるだけでも、当事者の孤独感は大きく和らぎます。安易な励ましの言葉は不要です。ただ、話を聞き、その悲しみに共感し、「いつでも味方だよ」というメッセージを伝え続けること。それが、最も効果的なグリーフケアとなるのです。葬儀の次の日から始まる、長く、そして静かな弔いの旅。その旅路を、焦らず、自分自身のペースで、周りの人々の支えと共に、一歩ずつ歩んでいくことが、何よりも大切なのです。