葬儀や通夜に参列した際、受付でまず最初に行うのが「芳名帳」への記帳です。この何気ない行為には、故人への弔意と、ご遺族への配-慮を示すための、大切なマナーが込められています。正しい書き方を身につけることは、社会人としての嗜みであり、あなたの品格を静かに物語るものです。ここでは、芳名帳の書き方の基本中の基本を解説します。まず、受付に着いたら、列に並び、順番が来たら受付係の方に「この度はご愁傷様です」と、短くお悔やみの言葉を述べます。そして、香典を袱紗から取り出して手渡し、記帳を促されたら、芳名帳の前に進みます。筆記用具は、通常、受付に用意されている筆ペンやサインペンを使用します。弔事であるため、薄墨の筆ペンが用意されていることもありますが、書き慣れていない場合は、無理をせず、黒のサインペンやボールペンを使っても構いません。大切なのは、誰が読んでも分かるように、丁寧な字で書くことです。記帳する内容は、主に「氏名」と「住所」です。氏名は、必ずフルネームで記入します。同姓の方がいる可能性もあるため、姓だけを書くのは避けましょう。そして、最も重要なのが「住所」の記入です。ご遺族は、この芳名帳に書かれた住所を元に、後日、香典返しや挨拶状を送付します。郵便番号から都道府県、番地、マンション名、部屋番号に至るまで、省略することなく、正確に記入することが、ご遺族の後の負担を大きく軽減するための、最大の心遣いとなります。文字は、崩し字や走り書きは避け、はっきりとした楷書で書くことを心がけましょう。また、芳名帳は、多くの人が書き連ねていくものです。自分だけが大きな字で書いたり、逆に小さすぎて読みにくかったりすることのないよう、前後の人の文字の大きさに合わせる配慮も、美しいマナーと言えるでしょう。記帳は、単なる受付手続きではありません。それは、故人への最後のメッセージを記し、ご遺族との繋がりを未来へ紡ぐための、厳粛で、心のこもった儀式なのです。
葬儀での芳名帳の書き方基本マナー