葬儀の受付で記帳を求められる際、その形式が、昔ながらの「芳名帳(帳面タイプ)」であるか、近年増えている「芳名カード(ゲストカード)」であるかによって、書き方や心構えが少し異なります。ご遺族側としては、どちらの形式を選ぶべきか、また、参列者としては、それぞれの形式にどう対応すべきかを理解しておきましょう。まず、伝統的な「芳名帳」は、和紙などで作られた帳面に、参列者が順番に名前と住所を書き込んでいくスタイルです。参列者側の書き方のマナーとしては、前後の人の文字の大きさやスペースの使い方に配慮し、全体のバランスを崩さないように、という細やかな気遣いが求められます。狭いスペースに、読みやすく、かつ丁寧に書く技術が必要です。ご遺族側が芳名帳を選ぶメリットは、弔問客の一覧性が高く、伝統的な格式を保てる点にあります。しかし、参列者が多いと受付に長蛇の列ができてしまう、という大きなデメリットもあります。一方、「芳名カード」は、一人一枚ずつ、手のひらサイズのカードに氏名や住所を記入してもらう形式です。参列者側の書き方としては、自分専用のスペースが確保されているため、周囲を気にすることなく、落ち着いて、そして丁寧に、必要な情報を全て書き込むことができます。他の人に自分の個人情報を見られる心配もありません。ご遺族側が芳名カードを選ぶ最大のメリットは、受付の混雑を劇的に緩和できることです。複数人が同時に記入できるため、参列者を待たせることがありません。また、葬儀後に、カードを五十音順に並べ替えるのが非常に容易で、香典返しのリスト作成やデータ管理といった、後の事務作業が格段に楽になります。デメリットとしては、カードを一枚ずつ配布・回収する手間がかかることや、カードを紛失してしまうリスクがあることが挙げられます。どちらの形式を選ぶべきか。一つの判断基準は、葬儀の規模です。参列者が三十名程度の小規模な家族葬であれば、芳名帳でも問題ないでしょう。しかし、百名を超えるような一般葬の場合は、芳名カードの方が、参列者にも、そしてご遺族にも、負担の少ないスムーズな運営が実現できます。それぞれの特徴を理解し、その葬儀に最もふさわしい記帳の形を選択することが大切です。
芳名帳と芳名カード書き方の違いと選び方