葬儀を無事に終えた次の日、喪主やご遺族がまず行うべき大切な務めの一つが、お世話になった方々への「挨拶回り」です。この挨拶回りは、葬儀という非日常的な儀式を支えてくれたことへの感謝を直接伝える、非常に重要なコミュニケーションです。相手への敬意を払い、失礼のないようにするための、いくつかのポイントを押さえておきましょう。まず、挨拶に伺うべき相手の優先順位を考えます。最優先となるのは、葬儀の儀式を執り行っていただいた「寺院の僧侶」です。次に、受付や会計、駐車場係など、具体的な「手伝いをしてくださった親族や友人」。そして、葬儀の際に、車の出入りや人の往来でご迷惑をおかけしたであろう「近隣の方々」です。また、故人が生前特にお世話になった方や、喪主の職場の上司などにも、直接挨拶に伺うのが丁寧な対応です。挨拶に伺う時間帯は、相手の都合を考え、午前十時から午後三時くらいまでの、比較的落ち着いた時間を選ぶのが良いでしょう。事前に一本電話を入れ、「昨日のお礼に、少しだけお伺いしたいのですが、ご都合いかがでしょうか」と、アポイントを取っておくと、より親切です。服装は、喪服である必要はありませんが、黒や紺、グレーといった地味な色の平服(略喪服)を着用します。そして、菓子折りなどの「手土産」を持参するのがマナーです。手土産には、「御礼」と書いた、白黒結び切りの水引の、のし紙をかけます。挨拶の際には、まず玄関先で、「昨日は、お忙しい中、大変お世話になりました。おかげさまで、滞りなく父の葬儀を済ませることができました」と、感謝の言葉を述べます。家に招き入れられたとしても、長居は禁物です。お茶をいただいたら、「長々とお邪魔しては申し訳ありませんので、この辺で失礼いたします」と、こちらから切り出して、十五分から三十分程度で失礼するのが、相手に気を使わせないための心遣いです。近隣への挨拶回りでは、「この度は、何かとご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。大変お世話になりました」と、葬儀中の騒音などへのお詫びと、協力への感謝を伝えます。この丁寧な挨拶回りが、葬儀という大きな出来事を円満に締めくくり、今後の良好な人間関係を維持するための、大切な一歩となるのです。
葬儀翌日の挨拶回りで気をつけること