長年、知人の葬儀で何度か受付係の手伝いをさせていただいた経験から、ご遺族が後で本当に困ってしまう、記帳のNGな書き方というものが、いくつかあることに気づきました。心を込めて弔問に来てくださっているのは重々承知の上で、ほんの少しだけ書き方に配慮していただくだけで、後の作業が格段にスムーズになる、ということを、ぜひ知っていただきたいと思います。まず、最も困るのが、やはり「住所の不備」です。特に多いのが、マンションやアパートの「部屋番号」の書き忘れです。氏名と建物名まで分かっていても、部屋番号がなければ、香典返しをお届けすることができません。また、「〇〇市〇〇町まで」で終わってしまい、番地が書かれていないケースも意外と多くあります。ご本人は、自分の家のことなので、つい省略してしまうのかもしれませんが、私たちにとっては、その最後の情報が命綱なのです。次に、達筆すぎて、あるいは癖が強すぎて「文字が判読できない」ケースです。特に、旧字体の漢字や、珍しいお名前の場合、ご遺族が読み方を間違えて、失礼にあたってしまわないかと、非常に気を遣います。心を込めて書いてくださっているのは伝わるのですが、できれば、誰もが読める「楷書」で、はっきりと書いていただけると、本当に助かります。そして、意外と多いのが「同姓同名」の問題です。会社関係などで、同じ部署に同姓同名の方がいらっしゃる場合、名前だけでは、どちらの方からいただいた香典なのか、全く区別がつきません。このような場合は、名前の横に「(〇〇部)」や「(〇〇支店)」といった、所属部署を書き添えていただけると、一目瞭然で、大変ありがたいです。また、芳名カードの場合に、裏面の住所欄に気づかず、表面に名前だけを書いて帰られてしまう方も、時折いらっしゃいます。カードの裏表を、一度ご確認いただけると幸いです。これらのことは、決して参列者の方々を責めているわけではありません。悲しみの中で、慌てて記帳されているのですから、仕方のないことだとは思います。しかし、もしこの記事を読んだ方が、次に記帳される際に、ほんの少しだけ、「この後、遺族が整理するんだよな」と、想像力を働かせてくだされば、それだけで、多くのご遺族が、その見えない心遣いに救われるはずなのです。
受付係が教える記帳で困るこんな書き方